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📗 コラム

一般的な太陽電池モジュールの寿命は25〜30年であるが、太陽電池モジュールが寿命末期(End-of-Life: EOL)を迎える前に、太陽光発電システムから撤去されるケースも見られる。太陽光発電システムから太陽電池モジュールが取り外される理由は様々である。土地の所有者が変更される、発電所が閉鎖される等、事業者側の事情によってモジュールが取り外されることもある。また、より発電効率の良いモジュールへ交換(アップグレード)する場合もあるだろう。モジュールが寿命を待たずに撤去され、稼働できる状態にある場合は特に、第一の選択肢としてリユースを検討することが望ましい。本記事では、太陽電池モジュールのリユース市場の概要を解説する。

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現在、リユースされている太陽電池モジュールの枚数は?

  • 2021年に実施されたPV CYCLEとimec/EnergyVilleの調査によると、太陽電池モジュールのリユース市場に進出している企業は15社程であり、市場規模は、年間500または600 MWp程度だと推測されるが、太陽光発電所の閉鎖や太陽電池モジュールの中古市場に関する登録が不足しているため、正確な取引規模を推定することが難しい[1]
  • CSA Groupが、2020年に発表した北米の太陽光発電市場に関するレポートによると、統計データは存在しないものの、専門家とのインタビュー結果から、使用済みモジュールのうち平均25%が中古利用や海外への輸出準備に出されていると推測できる[2]

リユース可能な太陽電池モジュールの枚数は?

  • Reclaim PV Recyclingがオーストラリアのクイーンズランド州で実施した検査結果では、検査対象の使用済み太陽電池モジュールのうち31%がリサイクルではなくリユース可能である可能性があることがわかった[3]
  • 北米でCSA Groupが実施したインタビューによると、使用済み太陽電池モジュールのうち、最大70%のモジュールがリユースまたは修理可能である可能性があると推定できる[2]

太陽電池モジュールのリユースのために必要なプロセスは?

太陽電池モジュールのリユースは、リサイクルに比べ低コストであり、必要となるステップも少ない。アリゾナ州立大学の研究者による研究では、使用済み太陽電池モジュールの適正処理における3つのシナリオ、すなわち、太陽電池モジュールのリユース、コンポーネント抽出、マテリアル抽出のうち、太陽電池モジュールのリユースが最も高収入であり処理工程が少ないことがわかった[4]

CSA Groupは、太陽電池モジュールがリユース可能かどうかを見極めるために、以下のテスト工程を推奨している。

1) モジュールの基本情報のドキュメント化(例、寸法、種類、セルの数、公称電力、シリアルナンバー)

2) 外観検査(結果は、データシートに記録)

3) 性能検査(結果は、データシートに記録)

4) 買手にドキュメントを提出。必要に応じて、当局にも提出[2]

太陽電池モジュールのリユースを促進させるための規制や規格は存在するか?

  • 2021年に、 Sustainable Electronics Recycling International (SERI)は、SERIによって開発された電子機器の修理、リユース、リサイクルに関する世界規格であるR2規格に、太陽電池モジュールを加える手続きを開始した[5]
  • 日本では、環境省が2021年に、太陽電池モジュールの適切なリユースを促進するためのガイドラインを公開した。ガイドラインの内容は義務ではないものの、テスト、検査、使用済み太陽電池モジュールの記録等、モジュールのリユースに伴う手続きを標準化させることを目的としている[6]
  • オーストラリアでは、 2022年5月にReclaim PV RecyclingとCircular PV AllianceがMOUを締結し、太陽電池モジュールのリユースと再販売を促すために、規格とテスト工程を共同開発することを発表した[3]

太陽電池モジュールのリユース市場は未成熟である。しかしながら、太陽電池モジュールにおけるサーキュラーエコノミー(循環型経済)を確立させるためには、リユースを促進することが極めて重要である。太陽電池モジュールのリユースにより特化した規制や規格が整備されることで、太陽電池モジュールの再利用が後押しされるだろう。また、太陽光発電モジュールのリユースに関するより正確なデータ収集をすることで、リユース市場の課題や需要を明確にすることができる。使用済み太陽電池モジュールの処理の選択肢やリサイクルについては、別の記事で紹介している。

参考文献

[1] PV CYCLE and Imec, “RE-USE of PV modules, challenges and opportunities of the circular economy.” https://pvcycle.be/wp-content/uploads/Press-Release-Reuse-08032021.pdf (accessed Jan. 24, 2023).

[2] K. Wambach, K. Baumann, M. Seitz, B. Mertvoy, and B. Reinelt, “Photovoltaic (PV) Recycling, Reusing, and Decommissioning — Current Landscape and Opportunities for Standardization,” 2020.

[3] Reclaim PV and Circular PV Alliance (CPVA), “Reclaim PV Recycling & Circular PV Alliance sign milestone MOU to drive the reuse and resale of solar panels and enhance the solar energy circular economy.” https://www.circularpv.com.au/_files/ugd/10e921_9d64c02665e94882acf262ad19676d60.pdf (accessed Jan. 24, 2023).

[4] M. Tao et al., “Major challenges and opportunities in silicon solar module recycling,” Progress in Photovoltaics: Research and Applications, vol. 28, no. 10, pp. 1077–1088, Oct. 2020, doi: 10.1002/pip.3316.

[5] SERI (Sustainable Electronics Recycling International), “R2 Solar Update.” https://sustainableelectronics.org/r2-solar-update/ (accessed Jan. 24, 2023).

[6] Ministry of the Environment Government of Japan, “太陽電池モジュールの 適正なリユース促進ガイドライン,” 2021.

Author: Saki Kobayashi / 小林 さき

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